業界再編:獣医業界のこれからについて
Q:他業界ではこれまでに「業界再編」と呼ばれる淘汰の波がやってきていますが、この動物病院業界ではこれまではありませんでした。
しかし、犬の頭数と高齢犬の減少という経営環境を悪化させる市場縮小が進む中で、2019年から外資の企業動物病院と金融ファンドによるM&Aがこの動物病院業界を襲い始めました。
古藤先生はこのM&Aの動きについては、どのように見ておられますか。
古藤院長:この外資参入についてはあまり情報が入ってきておりません。
Q:この情報はまだまだ多くの院長が知らない情報だと思います。
古藤院長:私の知り合いの先生から聞いた話ですが、「企業動物病院に経営権を売った院長がいる」という話は聞いていました。その動物病院も規模が大きな病院なので、病院規模が大きくなると、経営や人事などで色々と問題や面倒事が起きてくるのかなと思っていました。
だから、その院長は企業動物病院に経営権を売却した方がいいとご判断されたのでしょう。
動物病院を企業動物病院に売った院長にどんなメリットがあるのかについては、私には分かりません。
私は個人病院でのチャンスを活かして、承継で開業院長になりました
Q:外資の企業動物病院がM&Aで買収しているのは、売上2億円以上の病院です。その規模の院長は、「これだけの規模になると勤務医が引き継いでくれることはない」と思い込んでおられる方が多くおられます。だから、企業動物病院に売るしかないと考えられておられます。
一方、これまでの承継開業での実例では、売上2億円以上の病院を若い獣医師が引き継いだケースがあります。
「開業時、借金の額は巨額ですが、その分の売上があるからきちんと払える」という正しい経営感覚を持っていれば、2億円以上の病院の承継も無理ではありません。
若い獣医師には承継は無理だと考えられて、外資の企業動物病院へのM&Aがどんどん進んでいくと、若い獣医師の承継開業のチャンスがどんどん失われていくことになります。
今はその瀬戸際の時期にあります。
そこで若い獣医師に2億円以上の病院を引き継げるチャンスを作りたいという私の思いを伝えたいのが、今回の企画趣旨です。
古藤先生は、企業動物病院についてはどのように見ておられますか。
古藤院長:企業動物病院については、働いたことがないので分かりません。
私は個人病院の中でも、勤務医・スタッフ数が多い、規模の大きな病院を選んで就職しました。手術をやりたくても、副院長クラスや専門性を持った先生がたくさん居るので、症例はそれらの先生に回っていくという規模が大きな病院ゆえのデメリットもありますが、その動物病院では一度担当すると外科までやらせてもらえる環境ではあったので、私は勤務医を続けながら、休日に大学病院に見学に出かけて勉強して、自分の得意分野をつくってきました。
その結果として、この富山の規模が大きな病院を引き継いで開業することができています。
個人病院には、院長から直接指導を受けることができる点と、若い獣医師でもどんどん経験を積めるチャンスがあることが魅力ではないかと思います。
Q:企業動物病院の勤務医から、新規であれ、承継であれ、規模の大きな病院から開業スタートされた方は非常に少ない。個人病院で臨床経験を積まれたことで自信を付けて開業する人が圧倒的に多いと言えます。
ゆえに、繁盛病院の院長には、企業動物病院に売却するのではなく、仲間である若い獣医師に病院を譲って、若い獣医師の開業チャンスを作っていただきたいと思います。
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