40歳代で動物病院の 獣医師 を早期引退を決断した理由は?
Q: 40歳代で引退を考える院長( 獣医師 )は、ほぼ間違いなく、その地域で繁盛している動物病院です。
早期でも引退したい理由の1つに「人事面での苦労」がありますが、人事の苦労はある程度のスタッフ数が居ることで 出て来る問題ですから、繁盛している病院の院長先生です。
また最近、40歳代の院長からの相談で多いのは「がんなどの病気」です。
なかなか健康診断も受けられないのが繁盛病院の院長先生ですから、がんなどの深刻な病気の発見が遅れる場合があり ます。
生命の危険がありながらも診療を続けておられる院長先生もおられます。
しかし、40歳代での引退は考えられないとするのが、業界の常識。
そこで40歳代で引退された元院長先生にリアルな 体験談をお聞かせ頂ければと思います。
まずは、早期引退しようと思ったきっかけからお願いします。
人事面(採用)の問題
一瀬元院長(以下、一瀬): 私の場合、1番の理由は人事面でした。 若い獣医師を雇おうとしたが、集まらない。
最初は私が院長ですから、代診を雇いたいと募集しても来ない。
その後、「雇いの院長」として募集しても、結果的に人が来ませんでした。
そんな時にこの事業承継を知りました。
若い獣医師を雇えないのなら、病院を譲って自分が引退することも選択の1つだと考えたからです。
そして引退しようと承継開業コンサルタントに相談したことで、健康問題に気付くことができました。
寝る間もなく、無休でやってきたので身体にかなりの負荷をかけてきたのでしょう。
この時点で「高血圧」であることが分かったこともリタ イアのいいタイミングになったと思います。
承継せずに院長を続けていれば、何か問題が起きていたのかもしれないと思うと、早期引退を決断してよかったと思います。
作本元院長(以下、作本): 30代で開業し、40歳くらいになると、自分が開業時に考えていた目標に辿り着く時期を迎えます。
その時、私の頭の中をよぎったのは、「これまで築いて来た売上額を今後5年間キープすることができるかな」という不安でした。
体力的にも、精神的にもきつい状態。
そして一瀬先生と同じように、人材的にも厳しい状態でしたので、「自分が続けていれば、これから売り上げは減っていくだろう」と予測しました。
そんな時にこの事業承継を知って、今の経営状態がいい時に病院を他者に任せてしまうという選択をしました。
これは、この動物病院を社会のために残さなければならないと考える経営者発想からして当たり前の発想と思えたので、
動物病院を譲って院長を早期引退する決断をしました。
院長を引退することの意味することは何?
Q: サラリーマンの早期引退はリストラ前の「割増退職金」を目当てに応募することになりますから、
会社を辞めるという行為でも、脱サラで独立とは全く違う、マイナスイメージがつきまとうことになります。
そのため、「出来るだけ会社にしがみつけ、辞めるな」というアドバイスが主流になっています。
サラリーマンの早期引退と比べて、動物病院の院長を辞めるというのは、どんな意味を持っているのでしょうか。
一瀬: 獣医師は、獣医になる夢のために子供の頃からずっと勉強をしてきて、
その夢を現実化させてきたから、今の獣医師、院長としての自分があります。
そして自分がこの院長を辞めるというのは、これまで自分が生きてた生き方そのものを捨てることになるから、これはよほどの覚悟がないと出来ないことです。
これは、会社の社長が会社をM&Aで譲って辞めることとはまるで意味が違うと思います。
作本: 私はそこまでの覚悟はなかったです。院長を辞めた後も、獣医師としてなんでもやれると思っていたからです。
獣医師のリタイア の形について
Q: 一瀬先生のリタイアはどんな形ですか。
一瀬: 院長も辞めて、獣医師も辞める。完全リタイアです。これから何をしようかと思うのですが、これから「自分の人生2.0」が始まる気がしています。
Q: 40代ですから、まだまだ現役で頑張らなければならない年齢ですが、作本先生は院長引退後にピンチヒッター獣医師などの新たな働き方を作られて、
獣医師としてご活躍されていますが、一瀬先生は獣医師も辞められて完全リタイアされておられます。
この両者でリタイアの違いが出てくるのはなぜでしょうか。
作本: 一瀬先生は、獣医師の他に、不動産業という仕事もやっておられます。私は、臨床獣医師になる前は企業勤めをしていた経験もありましたが、病院を譲った後、他の仕事をやろうという選択肢はなかったので、獣医師をそのまま続けています。 最近では、その獣医師から経営面で病院をサポートする立場に移行したいとは考えていますが。
一瀬: 私は病院経営の他に、賃貸業の不動産ビジネスを同時にやってきました。
この2つのビジネスを展開させてきたことで、私が作った動物病院は「i style」という、患者さんを会員組織にするというこれまでの動物病院にはなかった新しいビジネスモデルを展開してきました。
これは、レンタルビデオの蔦屋 「TSUTAYA」さんがやっている「Tカード」のような発想で、
会員になれば様々な特典を設けるなどの「カード発行」から、同じ動物病院内でペットグッズショップもあり、トリミングもありと、ここに来ればペットに関するあらゆるサービスが受けられる「ワンストップサービス」を展開してきました。
この事業承継でこのシステムごと譲って獣医師は完全リタイアしたので、これから違う分野でまたどんな新しいことが生み出せるのかとワクワクしています。
40歳代でなぜ早期引退ができたのか、その疑問にお答えします その1
静岡・一ノ瀬動物病院 一瀬猛元院長 ✖️ 大阪・作本動物病院 作本貞良元院長
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