なぜ動物病院の獣医師たちは引退を決断したのか?
公務員でもサラリーマンでも60歳が1つの区切りでしたが、年金や健康保険などの社会保障費負担が高齢化によって増えているため、定年を65歳から70歳に引き延ばそうという検討が政府・厚生労働省などで始まっています。 獣医師 は生涯資格であるため、定年は自分で決めることができます。
そのため、70歳、80歳でも現役であり続けることはできます。
しかし、体力面や気力・モチベーションの面から限界を感じて、50代、60代で他者に病院を譲って引退を決断する院長が増えてきています。
加えて、40代での引退を考えている院長が増えているとのことです。
なぜ40代で院長引退をしたいのか、その理由はどこにあるのでしょうか。
年齢による引退理由の違い
40代院長の引退理由は、60代とは違う
「40代の院長からの承継リタイア相談が増えてきたのは、2018年からです」(承継開業コンサルタント・西川芳彦氏)。
40歳代となると、家族や子供の生活・教育などのためにまだまだ働き続けなければならない年代です。
しかし、この年代で自分の動物病院を他者に譲って院長を引退したいとなぜ考えるのでしょうか。
その理由をお伺いすると、そこには現在の動物病院業界が抱えている大問題が潜んでいました。
「早期引退したい理由は、3つに整理できます。
引退理由1:人材不足
1つ目は、「勤務医、看護師の人材難・求人難」です。
新しく勤務医を雇いたいのに募集をかけてもなかなか来てくれないと、人事面での苦労が以前にも増して深刻化しているからです。
若い勤務医が来ないなら、いっそのこと、若い獣医師に動物病院を譲ってしまった方が人事の苦労から開放されるのではと考えるからです。
引退理由2:医療技術の進化に対する遅れ
2つ目は、「獣医療技術の進化について行けないから」という理由です。
スキル面で時代の流れに合わせることを意識されていない先生はおられないと思いますが、あまりにも医療技術の進化が早すぎるからです。
引退理由3:動物病院の売上格差
そして3つ目は、「繁盛病院とそうではない病院との格差がどんどん大きくなっているから」です。
繁盛している動物病院には、クチコミやネットなどで以前にも増して早いスピードで患者さんが集中して、さらに繁盛するようになっています。
その繁盛動物病院の院長は、獣医療に対する思い入れが強いので、「いい加減な診療はできない」と命がけで診療に取り組んでおられます。
そのため、身体的にも、精神的にも追い詰められた状態になっていて、
この状態がいつまで続くのかと考えた時に、「引退してこの辛い状態から1日も早く解放されたい」と早期引退を決断されるのです」(西川氏)。
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