動物病院の カルテ は患者と病院との共有財産。廃業すれば、ゴミになる
動物院長院長の引退について周囲の声
Q: 60を前にして一区切りを付ける生き方に、友人は何と仰っておられますか。
匿名院長: 高校時代の友達とは、今でもよくお酒を飲みに行って会う機会があるのですが、
多くはサラリーマンです。
一流の大企業にいる友達もいます。
仲間内での話題となると、給与だったりしますが、今でもはっきりと覚えているのは、35歳の頃にはっきりと差が開いていたことです。
その時はくやしい思いもしましたが、最近になって、私の職業、獣医師は生涯できる仕事だと気付いて、
「これでよかった」と思っています。
定年も自分で決められるのは、職人のいいところですね。
自営業ですから、「いつしかこの仕事の終わりが来る」と思ってやってきましたが、
強制的に定年がやってくる役人やサラリーマンの方がリタイアについては考えていないかもしれません。
自分がやりたい年までダラダラと仕事をやり続けられるということで、
私はこの獣医師を選んでよかったと思っています。
動物病院の事業承継について感じたこと
Q: この事業承継を知って感じられたことは何だったのでしょうか。
匿名院長: この事業承継を知るまでは、
「身体も弱ってきて、獣医師として本当にやりたかったこともできずに、惨めなかたちで終わっていくのかな」
と思っていました。
周りからみれば、私は本院のほかに分院をもつまでになったのだから成功した人生と映っていたかもしれませんが、
本心から言えば、
ここまで動物病院を大きくしたくはありませんでした。
他に負けまいと売上ばかりを考えてきましたから、
どんどん現場からは離れてしまいました。獣医師としては、まったく面白くない人生、ストレスでした。
しかし、この事業承継でまた現場復帰ができる。
難しい手術を成功させた時のあの感動がまた蘇ってきます。
野球で例えれば、逆転ホームランを打った時の、「やった」という満足感、充足感をまた味わいたいですね。
このままいけば廃業するしかないと思っていましたが、
この事業承継で、「生涯現役でも」という自分の夢がかなうことになります。
気づいたことはカルテの大切さ
また、この事業承継で改めて気付いたのは、カルテの大切さでした。
当院ではこれまでも患者さんが転院される場合にはカルテをコピーして渡していました。
考えてみれば、動物病院のカルテは患者さんと動物病院との共有財産です。
「自分さえよければ」と廃業してしまえば、カルテはゴミになってしまいます。
廃業せずに病院を第三者に譲ればカルテも次の世代へと受け継がれていくことになります。
患者さんとの共有財産であるカルテを次世代にバトンタッチしていくことも我々世代の院長には大事なお役目ではないでしょうか。
リタイア時期を予定して10年後に承継を決断した院長
匿名院長(大阪)
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