動物病院(事業)の 成長 と自分の生活

公開日:2019年09月22日
この記事はメディカルプラザが制作・監修した「サクセッション - 獣医師向け動物病院の承継開業の情報サイト」上で連載された記事を本サイトへ移行したものとなります。

動物病院の 成長 と自分の生活

動物病院の成長に伴う理想と異なる現実

 

動物病院を成長させたが、その時、私の理想とは違う現実がありました。

Q1:この事業承継で完全リタイアするわけではないとのお話でした。

本院を1年後に譲渡されて、その後はなにをしようとお考えなのでしょうか。

 

匿名院長:この本院の事業承継をお願いしましたが、この先、沖縄あたりの暖かい地方に行って、そこで再度、獣医師としてスタートすべく、承継できる案件をさがしていただいています。

分院と本院ともに譲って、この地を離れたいと思ったのはこれまでやってきた動物病院経営は、本来自分が獣医師としてやりたかったこととまったく違ってしまったからです。

 

私の性格は、他人に任せるのが嫌い。他人がやっていることをじっと我慢して待っていられない性分です。病院を開業した時は、家内と2人で、看護師さんも増やさずにやっていたので、自分がやりたいようにやっていました。

ところが、近くに新たに動物病院が2軒できました。すると、売り上げがみるみる間に落ちて行く。この時、1人の獣医師でやっていることに限界を感じました。

手術するのが大好きなので、この楽しみは他の人に取られたくない思いがあったのですが、このままでは病院が立ち行かなくなっていくのではないかという不安を初めて感じて、病院を移転新築して獣医師を増やす決断をしました。

それから最大で、獣医師8人、看護師15人、受付も派遣で2人と、動物病院規模と売り上げでは他に負けない大病院になりましたが、私のところには手術はまわってこなくなりました。

 

自分の思い描く獣医師像との乖離

私自身はずっとプレーヤーでいたかったのに、いきなり、現役を外されて監督にされた感じです。

だんだん現場から離れて行く。

それからは自分が思い描いていた獣医師像とはまったく違ったものになっていきました。

手術だけをして1日を過ごしたかったのが、診察ばかりの毎日。

 

そして院長としての仕事と言えば、ミスと苦情の処理。家に帰れば、愚痴ばかり言っていました。

「こんなはずではなかったのに」と思ってきましたから、これから本院を譲ってしまえば、また私はプレーヤーとしてリスタートできるのではないかと思っています。

私は若い頃から「家事」、「自分がしたいこと」、そして「仕事」と生活を3等分しようと考えて実行してきました。

家事も料理以外は今でもやっていますし、趣味についても、親から「おまえは仕事よりも趣味で身体を壊す」と言われるほどに多趣味でした。

そして仕事はとにかく時間内で終わらせるようにときっちりしていました。

自分らしく獣医師で「仕事漬け」という生活ではなかったですが、これからはもっと自分らしく生きたいですね。

これからやりたいことは、「畑仕事」。

いまでも家庭菜園はやっていますから、「半農、半獣医」というのが理想の生活ですね。

これまでは自分が思っていた獣医師人生を歩んでこれませんでしたから、今度の承継でようやく自分の原点に戻れると思っています。

一般的にリタイアは不安になるものだと聞いていましたが、私はこれまでできなかったことがようやくできるようになるのですから、1年後が楽しみですね。

今度は沖縄に行こうと思っていますから、沖縄のことをネットで調べようとしたのですが、「周りにどんな病院があるのだろうか」とか、「この沖縄でどうすれば儲かるだろうか」と自然に調べている自分がいて、ハッとしました。

沖縄に行くのは、暖かいところでのんびりと生活を楽しみたいがためで、また頑張って海も山も行けない生活になってしまったら意味がないと思って、調べるのをやめました。

長年、お金儲けを考えることが習慣化してしまっている自分に改めて気付かされました。

これからは一転して、窓を開けたら田んぼがある。

そしておまけで獣医をやっているというスタイルで生活したいですね。

 

リタイア時期を予定して10年後に承継を決断した院長

匿名院長(大阪)

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