獣医師 引退 を決意した理由は?セミリタイアのススメ
獣医師の引退を決意したきっかけは?
記憶力の低下
リタイアというのは、人間、誰しも避けては通れないことだと思いますが、私が獣医師の 引退 の決断した理由の第一は、
「記憶力が落ちてきたこと」です。
患者さんの名前が出て来ない。
このことを、「こんなこともあるさ」と放っておくか、そこで「ちょっとまずいな」と思ってその先をどうするかを考えるか。
私は「この先に大きなミスをする前に」と思って、リタイアを決めたということでしょうか。
視力の低下
加えて、獣医師を引退した理由は「視力が落ちた」と実感したからです。
そう感じた途端に、本を読まなくなり、調べものが面倒になり、学会に行くのもなんだか億劫だなと感じるようになってしまいました。
これから病院経営は大変な時代を迎えることになることは十分予測していましたが、新しいアイデアを出してこの時代を乗り切って行こうという気持ち、意欲がなくなっていました。
一般の会社でも「会社30年説」という寿命があると言われていますが、自分がなんとかしなければ、成熟からこのまま衰退へと向かうことは必至です。
しかし、自分にはもうなんとかしたいという意欲が湧かない。
そこで他者に譲るのがいいのかと思って、自分のリタイアを考え始めました。
私のリタイアは、本院を第三者に譲渡して、分院の経営を自分が午前中だけはやり、午後は週3日、1・5時間、本院に勤務するという形にしました。
院長だけを引退して、獣医師は続けるという、セミリタイアです。
新院長については、最初から新しいアイデアで業績を伸ばしているのは流石だなと思います。
たとえば、私が「もうこれは仕方がないな」と思ったのを、ちょっと見方を変えて処方することでその犬の状態がちょっとは良くなる。
すると、飼い主さんも喜んでもらえる。あきらめないで常に新しい道を探して診療している。
この点は私も見習わなければならないと思います。
動物病院を承継した新しい院長との関係性は?
また承継の時にもこんなことがありました。
私は山ほど本を持っていて、これが財産だと思っていたのですが、新院長は「新しい本を買えばいいですから」と一言。
それは「10年前から研究されてきたことは、10年後には常識的なものになってテキストに載っている」ことを知っていたんですね。
新しい病気の新しい治療法はテキストを見れば載っている。
こういう感性は「なるほどな」、「すごいな」と思います。
私は経験値を持っています。新院長はこの感性と知識を持っています。
いま、共に診察を続けていることで、双方にとっていい刺激になっているのではないでしょうか。
獣医師のセミリタイアとは?
私がリタイアの方法として、院長は引退して獣医師は続けるというセミリタイアを選択しましたが、その理由の第一は、これまで診てきた患者さんをきちんと診ていかないといけないと思ったことです。
いま、病院内をのぞいてみますと、慌てて病院に来られたのに世間話をしているうちに段々落ち着かれて安心されて帰っていかれる飼い主さんがおられますが、ここが飼い主さんたちにとっては、癒やしの場、セラピーの場にもなっている感じがします。
獣医師と飼い主さんが和やかに話をしていると、動物たちも安心して身を委ねるということがわかってきました。
一人ひとりにかける時間が長くなり、アットホームないい病院になったなという思いと、これからも患者さんを大事にしたいという思いが重なり、セミリタイアを選んで良かったなという感じです。
自分が分院をやっていて、入院させないといけないケースも起きます。
これまでなら院長として預かった責任がでてきますが、入院は「本院」で預かってもらっていますから、「あとは頼むね」の一言で新院長にお願いできるのは有難いです。
もちろん、入院中の動物に関する報告、連絡、相談は欠かしませんが。
また、新院長がセミナーや学会で得た知識を診療に導入する時、そのエッセンスを教えてもらっています。
患者さんが分院と本院を本人の都合にあわせて使い分けていますので、診療内容を共有し、診療方針にブレがないので助かっています。
収入面よりも、他者と自分がやり取りできることが楽しみなので、仕事をゼロにしなくてよかったと思います。
新院長とはこういう関係ができているので、長期間の旅行でも行くことができます。この間もブラジルに行ってきました。
仕事を続けるセミリタイアですが、今後は徐々に仕事の時間を整理して、趣味や遊びの時間をつくっていってもいいかなと思っています。
現役時代は病院を閉めて自分が勝手に行動することは患者さんに迷惑がかかるからできなかったのですが、今は引き継いでくれた院長がいてくれるので自分の時間が作れていることは有難いことだと思います。
人生を考えての行動
獣医師をズルズルと続けるよりは、人生の切り替えの時期はあった方がいいと思います。いま、リタイア世代だけではなく、現役世代でも田舎暮らしを考える人が増えているのは、給与は減っても、余裕ができ、生活の質が上がるからでしょう。
田舎暮らしができるかどうかは、その地方に自分がどこまで順応できるかどうか。
そのためには、自分の社会性や社交性を磨いて行くことが大事だと思います。
そして、自分にできることを1つもつことです。
私の場合は、サンバですが、楽器が弾けるとか、釣りができるとか。
できることが1つでもあると、そこから人のつながりがでてきます。
ブラジル・リオのカーニバルに行ったときも、ホテルの前で踊っている人がいたので話しかけると、結局、一緒に歌って踊り、ビールを酌み交わすことになってしまいました。初対面でも何年来の付き合いのようになってしまうのは面白いですね。
獣医師こそ趣味を持っておこう
趣味はなんでもいいから、現役時代から持った方がいいと思います。
リタイアは、先を見越して自分がどれだけ行動したかで大きく変わります。
私が言えることは、自分が楽しめるものをまずみつけて、それが他者のために役立つことがわかってくれば、それが生き甲斐になるということです。
まずは「こんなことができますよ」の「こんなこと」を見つけることです。
懸命に動物の診療を続けられてきた先生方だからこそ、これからの人生は楽しむ方がいいですよと申し上げたいです。
なんとかしなければという意欲が湧かなくなったことで引退決意
セミリタイアを選択してよかったポイント
先を見越して自分がどれだけ行動したかでリタイアは大きく変わる
森動物病院 森俊士・前院長(千葉県松戸市)
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