動物病院の勤務医ではなく 第三者 に病院を譲る理由
動物病院の閉院か引き継ぎかの選択
Q: 中川先生は、最初は勤務医に譲ろうと考えておられたとのことですが、そこから第三者に切り替えることができない院長が多い。
なぜ考え方が変わったのか、その理由はどこにあったのでしょうか。
中川前院長: もともとは閉院する覚悟でいました。
ただそれでは、患者さんを投げ出すことになってしまいます。
自宅は病院のすぐ前ですから、「先生、なぜ閉めたんですか」と聞かれると申し訳ない気持ちになるのも嫌なので、誰かに引き継いでほしいと思いました。
そしてまずは私の病院の勤務医に承継の話をしました。
その勤務医は、私と同じ、広島県福山の出身で、「家賃だけでいいからここをやりなさい」と提案しました。
売り買いの話はせずに、この病院を家賃だけで貸すという提案でしたが、結果的には決断ができませんでした。
勤務医が動物病院を引き継ぐことができないと考えたのはなぜ?
その理由としては、私と長年一緒にやってきて、とんでもなく忙しい時期を経験していますから、これから自分1人になった時に「果たしてやれるだろうか」と不安になってことが1つ。
また、この「中川動物病院」という看板を背負いたくはなかったことが1つ。
彼は、立派にこの病院を守れる力量を持った人物ですが、この病院の経営者になるという決断はできませんでした。
そして「第三者」を探そうと思い、事業承継をお願いしましたが、これも、1人を紹介頂いて、その人がダメならまた次というように、ダラダラとやろうとは思っていませんでした。
それは、閉院を考えていたからです。
動物病院を勤務医に譲るか第三者に譲るか
Q: 中川先生は勤務医に承継を打診されて、素晴らしい条件でありながらも、勤務医先生が受けなかったから第三者で承継させようと考えを切り替えられたのですが、多くの院長は、勤務医に譲って売り上げが落ちたとしても、患者さんが馴染んでいるので、譲るなら勤務医の方がいいと考えておられます。
この点についてはどうお考えでしょうか。
中川前院長: 勤務医がこの病院を継ぐとなると、元院長はやはり病院が氣になってなんだかんだと手伝う事になります。
すると、引き継いだ新院長にはある課題が起きてきます。
それは、「自分のカラーが出せない」という課題です。
「自分のカラーが出せない」とは?
自分のカラーはオーナー院長としては絶対に必要な要素です。
元院長が助けてくれるのは、一見いいことと思うかもしれませんが、いつかは引退するわけです。
それが「いばらの道」の始まりになるかもしれません。
加えて、院長のもとで勤務医をやっている期間が長い人ほど、「自分のカラーを持っていない」とも言えます。
自分でどう判断するかではなく、院長ならどうするかを考えることが習性になっていますから。
同様のことは、親子の承継でも言えます。
息子は自分のカラーを出したいと思っても、親は「待て」と必ず言います。
動物病院の承継を第三者の方が良いと考えた理由
息子に譲ったのなら、自分は引っ越すくらいの覚悟をもってやらないといけないのに、息子が「うまくいっていないんだよ」と言うのは親のせいだと私は思いますね。
身内に譲っても病院からなかなか離れられないのに、身内に近い他人、勤務医に譲るともっと酷いことになる。
だから、私は知らない第三者の方がいいという選択をしたのです。
勤務医が引き継いでくれたらいいというのは、私には、院長の甘えのようにも感じますね。
勤務医であろうと、息子であろうと、「病院を譲ったら自分は去る」という覚悟ができるかどうかでしょうね。
Q: 中川先生のように、自分は去ると決断できる先生はごく一部であって、
大多数の院長は、仕事を失うのが怖い。
「病院=自分」だから、経営がどんなに苦しくなっても、自分はやめないと考えている院長が圧倒的に多い。
《前院長》勤務医に病院を譲れなかった理由
北海等帯広市 中川動物病院 中川光義・前院長 門淳志・新院長
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