犬猫のがんの専門病院を作るための 承継開業

公開日:2019年06月16日
この記事はメディカルプラザが制作・監修した「サクセッション - 獣医師向け動物病院の承継開業の情報サイト」上で連載された記事を本サイトへ移行したものとなります。

「がんの専門動物病院を作りたい」と大学の動物病院教員から 承継開業 した事例

これまでこのサイト「Succession」で、承継開業なら新規開業ではできないようなことが普通にできることの事例として、

1、開業資金がない、保証人がいないのに、銀行から融資を受けられて開業できたcase

2、勤務医からいきなり勤務医が何人も居る大動物病院の院長になったcase

3、新規から始めて、この事業承継でもう1件、動物病院を増やしたcase

4、勤務医からピンチヒッター獣医師となり、派遣先の動物病院で出会った元院長とのご縁から病院を事業承継、院長になったcase

5、院長が急死・即廃業になる病院を第三者に引き継いで残したcase

などを紹介してきましたが、

今回は「犬猫がんセンターを作りたい」と大学の動物病院の教員から、この事業承継によって開業された新院長に、この事業承継のメリット、デメリットを語って頂きました。

承継開業 のメリットとデメリット

Q: 伊藤院長は大学の教員から、この事業承継で臨床開業医になられたわけですが、承継開業から1年が経って、この事業承継について感じられたメリット、デメリットについて感想をお聞かせください。

収入面の不安

伊藤院長: 開業する時に一番心配になるのが、収入面だと思います。

収入に不安があるのは、承継も新規も変わらないのでしょうが、承継開業の場合は、引き継いだ当日から患者さんが来る。

つまりは、最初から売り上げがあるという点で、新規とは全く違うでしょう。

診療方針について

ただ前の動物病院を引き継ぐかたちで開業しますから、元院長のやり方と自分のやり方は当然ながら違ってきます。

難しいなと感じたのは、「元院長がこうやっていたから」と飼い主さんから言われることです。

 

私は大学の教員をしていたので、なるべくスタンダードな治療をまずはやっていくことを心掛けでいます。

そこで飼い主さんとの意識のギャップが生まれてしまうことがあります。

きちんとインフォームドコンセントをすることで、ある程度はクリアできると思いますが、私のやり方に合わない飼い主さんが出てくることはこの承継開業では避けられないことなのでしょう。

建物や器械について

また、この承継開業では、建物や器械も含めて引き継げるのはメリットですが、中古ですから、その器械が自分が求めているクオリティーに達していないこともあります。

また、「これは絶対に欲しい」と思う器械がないこともあります。

そのため、器械等である程度の初期投資が必要になることもあります。

ペットホテルやトリミングについて

さらには、動物病院の経営を考えると、診療の他に、ペットホテルやトリミングを併設した方がいいかとなってきますが、これは、承継物件を探す時から意識しておかないといけないことですね。

自分が承継した後で、トリミングをやるスペースかないことに気付いたとか、近くにトリミング店があったとか。

 

これらのことは、承継した後でしかわからないことですから、これから承継を考えている人には、特に強調してお伝えしたいことです。

自分のやりたいことができるかどうかをきちんと事前に調べることです。

私の場合は、2階があったので、早速改造して、トリミングルームを作りました。

そして、資金の面のことですが、承継開業後に自分なりのことをやろうとすると、

改装費とか、器械購入費とか、資金は必要になってきますから、「プラス1000万円」くらいは資金余裕をみておいた方がいいでしょう。

承継開業から腫瘍・がんは増えている?

Q: 伊藤先生の強みは、何と言っても、「腫瘍」「がん」の専門家である点ですが、

承継開業されて以降、「腫瘍」「がん」の症例は増えていますか。

ホームページの効果も

伊藤院長: 以前と比べると格段に増えていると看護師が言っています。

ホームページを作ってアピールしたり、前の大学でともに働いていた先生をヘッドハンティングして連れてきて、2人の獣医師ですが、専門性を活かして「犬猫がんセンター」と名付けました。

すると、近隣よりも遠方からの問い合わせが多いです。

この規模の動物病院では、その市と隣町くらいがエリアなんですが、ホームページをみて遠方から来れられるのは、この専門性があるからでしょう。

強気の動物病院経営をするには

私は自分の専門性を活かした開業がしたいと思いましたので、この承継開業で開業1年目にして自分の思いが叶うのはあり得ないことです。

このように「強気の経営」がすすめられるのは、最初から売り上げがある承継開業だからこそできることだと思います。

自分に何らかのスキルがあって開業したいけれども、開業資金がなくて厳しいと思っている獣医師には、すでにベースがある病院を買い取って、そこを自分のスキルが活かせる病院に改めて行くことで自分の思いを叶えることができることを伝えたいですね。

この承継開業ならできると思います。

私は普通の動物病院の「耳掃除」などの診療を一方でしながら、その横で、「来年生きていられないような子を診る」。

こんな診療スタイルができるのも、新規とは決定的に違うところです。

☆最初から売り上げがあるから、「強気の経営」ができる

県碧南市  バル動物クリニック 伊藤祐典院長

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