動物病院の事業承継できる院長とできない院長との違い

公開日:2019年06月08日
この記事はメディカルプラザが制作・監修した「サクセッション - 獣医師向け動物病院の承継開業の情報サイト」上で連載された記事を本サイトへ移行したものとなります。

動物病院の 事業承継 ができる院長とできない院長との違いはどこにあるのか?を動物病院の元院長に聞いてみました。

動物病院の 事業承継 ができる院長とは?

Q:獣医師の先生方の働き方について、作本先生はどう考えられていますか。

 

作本先生: まずは年齢で考えてみますと、70歳代は、ここまで続けてきたのだから、これからも続けたいし、続けて行けると思っている。

60歳代は、70歳代の先生方の働き方をみているから、自分たちもいけると思っている。一方、50歳代、40歳代になってくると死ぬまで働くという価値観の人は減って、途中でドロップアウトして何か他のことをやりたいと思っている。

 

この事業承継の観点から言いますと本来はこの70代、60代の先生の病院が若い先生に引き継がれて行くことが、動物病院全体にとっての「温故知新」にもなって望ましいことだと思います。

これまで獣医師界を支えて来られた先生方のノウハウを後世に伝えていくことになるから。

しかし今は、40代、50代の働き盛りの先生がこの事業承継でやめているという状況です。

事業承継ができる、できないの分かれ目とは?

Q:年齢のこともありますが、事業承継ができる、できないの分かれ目を作本先生はどう感じられたでしょうか。

自分の動物病院は自分のものではないことを意識している

作本先生: それは「経営」に対して意識を向けているかどうかでしょう。

「経営」を知っている院長は、このリタイアも理解しやすい。事業承継ができます。

では、この「経営」とは何かですが、

第一には、「自分の動物病院は自分のものではないことを意識している」ことです。

つまりは、動物病院は「社会のもの」「公共のもの」であるということです。

 

また、70歳代の先生がなぜ引退しづらくなるのかは自分がこの動物病院からいなくなれば、この動物病院は消滅すると思っておられる。

「自分の動物病院=自分」であるという捉え方になってしまうのでしょうが、

長年院長を続けているとそういう思いになってしまうのがむしろ自然なのかもしれません。

実際に私もそう思っていた時期がありますから。

それは「作本動物病院」と名前をつけたからです。

動物病院は自分の分身のような存在。私がいないと、「作本動物病院」ではないと思っていました。

自分にしかできない仕事を自分はやればいい

それがなぜ考え方が変わってきたのかですが、ある時、これらの仕事は自分だけしかできない仕事と誰にでもできる仕事の2つに分けられるのではないかと、ふと思ったのです。

つまりは、誰にでもできる仕事は自分がやる必要がないこと、他者に任せても良いのではと思い始めました。

自分にしかできない仕事を自分はやればいい。

他者に任せてもいいという仕事が8割くらいを越えてくるとこの動物病院を他者に任せてもやっていけるのではないかという意識になったのです。

 

自分がやらないと全部が成り立たないと考えてしまう。

「病院=自分」で、その病院から自分がいなくなることが想像できない。

 

こういうタイプはまだまだ院長の中で多いのかもしれません。

 

それゆえに、死ぬまで働くことで自分が安心できると考えてしまうのでしょうが、

そうなると、残された道は廃業しかなくなってしまう。

退職金はないし、器械や建物の処分費用がかかることになってしまいます。

また、その動物病院の院長先生であるという肩書きで地域とのつながりができていますから、その「院長」の肩書きがなくなった時に何も残らないと考えてしまうから生涯現役にこだわってしまうのかもしれません。

大阪 作本動物病院 元院長  作本貞良先生

 

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