夫(院長)の 急死 で動物病院の存続危機

公開日:2019年05月26日
この記事はメディカルプラザが制作・監修した「サクセッション - 獣医師向け動物病院の承継開業の情報サイト」上で連載された記事を本サイトへ移行したものとなります。

夫(院長)の急死で動物病院の存続危機

第三者事業承継の可能性

Q: 院長が突然亡くなると家族は存続させることを考えることなく、廃業するしかないと考えてしまいます。

そこでこの事業承継で第三者の獣医師に動物病院が譲れることを家族に知って頂ければ、廃業しなくても済む動物病院が増えることになります。

 

廃業することなく承継が決まったケースとしてご紹介したいと思います。

まず、院長先生の病院はかなりの激務だったと思われますがご自身の健康についてはどのように考えられていたのでしょうか。

ハードな診療生活と年齢

村岡様: 毎朝5時起きで、7時には一番で病院に出て、夜8時くらいまでは仕事をしているという生活でした。休みはありません。

またこの横手では農家さんが多いので、みんな、朝が早い。

そのため、3月から9月までの春夏時間の時は、朝5時から早朝診療もしていました。そして、手術したわんちゃん、猫ちゃんが居ると、そのまま病院に泊まって面倒をみる。

 

その後、身体がきつくなって週1回の休みを入れるようになりましたが、55歳の時に手術をした後も、ハードな診療生活はそのままでしたね。

手術が終わると、もう元の元気な頃の身体に戻ったと思ってしまうのでしょうか。本人が以前と変わらない生活をしていますから、家族も「ああ、大丈夫だ」と思ってしまいます。

しかし、本人は相当無理をしていたのだと思います。やはり、性格なのでしょうか。

夫はなんでも自分できちんとしなければ気が済まない性格でしたので。

 

また、夫のお父さんも獣医師で80歳まで牛の獣医をしていました。お父さんをみているから、自分も70過ぎても大丈夫。

まだまだ働けるという意識でいたのでしょう。

それから4年経った2015年3月に「いい薬がでるので、これで治療しよう」という話になり、入院する病院も秋田大学医学部に移して、入院しました。

薬の調整をするための入院でしたが、そのままになってしまいました。

 

一方、動物病院の方は、30歳代の若い先生1人が全部の責任を負わなければならない状況でした。

よほど大変だったのでしょう。そのまま、辞めてしまいました。

事業承継者(院長)を選ぶ決め手は?

Q: この事業承継は、普通では院長が承継者を選ぶのですが、今回は院長が急死されていますので、ご家族が判断することになりました。

承継者を選ぶ決め手になったのはどういう点でしょうか。

 

村岡様: 一番は患者さんとスタッフがOKであるということでした。スタッフは20年クラスが2人、10年クラスが1人と、その3人が病院を切り盛りしてくれましたので、その3人がこのまま生活ができればいいかなと思いました。

私が実家に帰ることもありますので、そんな時は病院のカギを預けて、

「行って来るから、ここの動物たち、お願いね」と言って出掛けることができました。

このスタッフがそのまま働けるのは、1つのポイントでした。

 

事業承継で新院長を選ぶことについては、コンサルタントのメディカルプラザさんにすべてお任せして進めました。

ただ私の考えとしては、後継者探しを1年続けて居なかったら、もういいかなという思いもありました。

動物病院は閉めても、その後はトリミングとトレーニングでなんとかやっていけるかなと思っていましたので。

ただこの承継がわずか3ヶ月の間で決まったのには驚きました。承継者が決まってからは、この動物病院の引き継ぎに忙しくなりました。

 

動物病院の事業承継の感想

Q: 事業承継を終えられてみて、どのような感想をもたれたでしょうか。

村岡様: メディカルプラザさんの言われた通りにやっていれば、きちんと事業承継できるのだなというのが、終わってからの感想ですね。

私は2ヶ月に1回、歯のメンテナンスに行くのですが、この承継が終わった後に行った時、

「歯茎の状態がすごくいいですね、何かありましたか」

と歯医者さんに聞かれました。

「ああ、事業承継で病院を譲る人が決まったので、これまでのプレッシャーがなくなったからでしょうか」

と答えたら、

「ストレスも歯の調子と関係があるんですよ。免疫力も落ちますしね」

と言われました。

寝ても覚めてもこれからどうしようとばかり考えて苦労していましたので、ストレスは相当たまっていたのでしょう。

 

患者さんから「どうなるんですか」、「いつやるんですか」と聞かれることも、続けて行こうという励みにもなりましたが、不安やプレッシャーにもなっていました。

この事業承継でこの重しがとれて、それが歯茎の健康という形で表れてきたということでしょうか。

スタッフもそのまま働けて、私はもう病院については何も考えなくていいので、事業承継してよかったと思いますね。

 

村岡信子様(元院長夫人)

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