宝達:この北里大学でも、学生さんの男女比が1対1になってきています。これからはますます女性の学生が増えて行くと思いますが、この承継開業での女性の割合はどれくらいですか。
西川:これまでの承継事例は130件ありまして、そのうち、女性の承継は3件です(2018年2月現在)。
宝達:女性は本当は開業したいけれども、いろいろな理由で進路を変更しなければならない人が多いように思います。
女性獣医師の開業が難しくなる理由は?
女性獣医師とお金について
西川:女性の開業が難しくなっていることについては、根本的理由があります。
これは多くの院長先生が仰っていることですが、「昔の女性獣医師は親がお金持ちである人は少なかった」とのことです。
しかし、最近では親が裕福な家庭の子供でなければ獣医学部には入れません。
宝達:そうですね。教育と親の年収が正比例する時代に入っています。
西川:承継者を探している病院は繁盛病院ですが、その院長先生が異口同音に仰ることがあります。それは、「若い頃にはお金がなくて困った」と仰るのです。
借金をしていることがハングリー精神につながり、今日につながっていると。
これは、私がこの承継開業コンサルで気付いたこの業界の法則かもしれませんが、「親がお金持ちであることは、決して子供の開業にはプラスにはならない」のです。
実際の女性の獣医学生の声は?
宝達:今年も私の研究室からは何人かが小動物臨床医になりますが、「何年後かに開業するの」と聞くと「そこまでは考えていません」とか「とにかく勤務医を続けられればいい」という答えです。
しかし、本心では開業したいのだなと感じることがあります。
そこでこの承継開業のことを知ることは、女子学生にとっては有益な情報になるのではないかと思います。
女性獣医師ならではの課題
西川:ただ女性獣医師が長く勤められないのは、結婚、出産、子育てがあるためですが、そこには院長の考えが深く関係しています。
今はペットが家族という意識ですから、「臨床医になったからにはきちんと責任を持て」と言う院長もいます。
子育てがあれば、5時に帰るとか、夜勤や急患はできないとか、事情を考慮しなければならないことがありますが、これを認めない。
長時間労働とハードワークについて
宝達:長時間労働が問題視されてきていますが、まだまだこの領域では、生き物を扱う仕事だから長時間勤務が当たり前という考え方があります。
西川:この長時間勤務については、業界全体が変わらないといけない時期にきているのではないでしょうか。将来開業したい人なら、「厳しさ」は必要ですが一方で子育てや自分のライフスタイルに合わせた働き方ができるような環境づくりをしていくことも大事になっていくと考えられます。
全員がハードな勤務環境の中で働けというのは、もう時代の流れに合わなくなってきているように感じています。
企業なら「ブラック」は敬遠されていますから。
宝達:この労働環境については開業医の先生方も考えていかなければならない時期が来ているのだと思います。
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