大学入学時には小動物臨床志望が大多数なのに、卒業時には半分くらいまでに減ってしまうのが実態である。そこで、どうすれば臨床医として希望が持てるようになるのか。北里大学獣医学部の宝達勉教授に伺いました。
院長はなぜ勤務医に動物病院を承継しないのか?
宝達教授:学生さんからよく質問されるのは、
「勤務医が居る病院があるのに、なぜ勤務医はその病院を継がないのか」、
「院長は自分が育てた勤務医に引き継いでもらいたいと考えるのが普通だ」
と言うのです。この点についてはどうでしょうか。
勤務医と院長における経営に関する理解度の差
西川:これはこの承継開業を理解する上での重要なポイントです。院長は経営がわかる人なので、繁盛している病院ほど、タダで譲るのではなく、ある程度の金額で買い取ってほしいと考えています。
しかし、勤務医はこの「経営=数字の勉強」をしていないので、院長から提示される金額の意味がわかりません。
例えば、「売り上げ1億円の病院を7000万円から8000万円で買い取ってほしい」と言われたら、勤務医はどうすると思われますか。大抵の勤務医がこの金額にビックリして、断って、辞めてしまうのです。
その金額は、勤務医がその金額を支払っても十分に病院を経営していける金額なのですが、勤務医は経営の勉強をしていないので、その数字の意味が理解できないのです。
また、自分の師匠の病院ですから、引き継ぎにくい面もあると言います。
資金の調達方法がわからないからやめるのは勿体無い
宝達:確かに7000万円とか、8000万円と聞くと、その金額をどう調達すればいいのかと悩んでしまうのでしょう。
西川:経営がわかっている勤務医なら、稼ぎが1億円ある病院がその金額で手に入るならラッキーと捉えるでしょう。譲り受ける病院は現時点で毎年1億円の売り上げがあるわけで、自分の努力次第ではもっと数字を伸ばせると考えるからです。
資金調達の面で言えば、どのような方法で資金を集めるのかをご提案するのもコンサルタントの私の役目です。これまでに預貯金がなくても承継開業できた勤務医は多く居ます。
宝達:新規開業は資金調達から場所や器械を選ぶのも全部自分でやることになりますが、承継開業ではすでに売り上げがあるという点で、新規スタートとはまるで違いますね。
動物病院の承継開業のこれから
ところで、この承継開業はまだまだ学生や勤務医には知られていないと思いますが、これから知る人が増えて来ると、どうなるのでしょうか。
西川:はい、そうなると、アメリカのようになるのだと予想しています。アメリカでは、実力のある獣医師しかこの承継開業はできません。承継開業できない人がやむを得ず、新規で開業するという形です。
宝達:そうすると、これからは院長が自分の病院を譲る相手を選ぶことになるのでしょうか。
西川:アメリカではそうです。実力さえあれば、自己資金がなくても、いい病院を引き継いで開業できます。つまりは、この承継が知られていくことで、獣医師の実力時代が始まるのだと思います。
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