連載記事

Articles

現在は犬の数は減っても売上が伸びている

2016年の4月に総務庁統計局「経済センサス」にて、2014年調査の、全国の動物病院の売上合計データが公表され、3427億円となった。5年前に比べて、10.7%の増加である。犬の数が、5年前に比べて16.0%減少していることと対照的である。犬の数が減少しているのに動物病院の売上合計が伸びた理由は、犬猫1頭当たりの売上が、5年前の平成21年の13,852円から16,878円へと21.8%も伸びていることによることがデータから読み取れる。(表1)昨年の本誌で予想したとおり、動物病院の売上合計は増加し続けていることが明らかになった訳である。驚きの事実は、動物病院が増え続けているにもかかわらず、全国の動物病院1軒当たりの平均売上も伸び続けていることである。理由は、犬の高齢化により、重症症例と慢性病症例の増加があるためであると考えられる。逆に言えば、重症症例と慢性病症例の少ない病院は経営的に非常に苦しくなっており、いわゆる動物病院の二極化が一層進んでいると思われる。また、軽い病気や予防は近くの動物病院を利用し、思い病気は遠くても大きい動物病院を利用するとの、いわゆる、動物病院の使い分けをしている飼い主も増える傾向にある。

 

 

現在の動物病院マーケットは高齢犬に支えられている

図6は、筆者が犬のJKC登録頭数(出生数)から推計した、犬の10歳から15歳のいわゆる高齢犬の年次推移である。2009年の2360千頭と2014年の3005千頭を

比較すると、この5年間で27.3%伸びている。この数値は前述したように、犬の数が減っているのに売上合計が伸びていることと見事に一致しているように見える。

 

 

近い将来、動物病院のマーケットは縮小する

図6で示したように、現在の2016年と10年後の2026年を比較すると、10歳から

15歳までの高齢犬の数が約40%減少する。動物病院の犬猫1頭当たりの売上が大幅に

伸びているのは獣医療の進歩に負うところが大きいのだが、いくら獣医療が進歩しても、

高齢犬が激減して、重症症例と慢性病症例が減る中で犬猫1頭の売上が今後も上がり続けるだろか。

わたしが、昨年の本誌でも書いたように、遅くとも、次回の経済センサスで調査される平成31年には、犬の高齢犬が減り始めるのは間違いない。そのときには、大きな病院といえども、現在のように成長を続けることはそう簡単ではなくなってくる。

 

 

動物病院の収益性向上の余地は大きい

表2は、昨年の日本臨床獣医学フォーラム年次大会で私が講演したときの動物病院の経営データであるが、動物病院の院長報酬率に大きな差が、最低8.4%から最高47.0%

まで大きな差があることがわかる。一般企業では、収益性は売上高経常利益率で判断するのが一般的だが、動物病院経営では節税のために経常利益を圧縮するケースが多いので、院長夫人、家族の報酬をを含めた、売上高院長報酬比率(売上高に占める院長報酬の比率)を

動物病院の収益性の指標にすることを提唱している。動物病院の経営規模によって売上高院長報酬比率の目標値は異なるが、この数字を3割にすることを一つの目安にしたい。

動物病院の収益性が高ければ、今後の成長性がマイナスになっても動物病院経営において

診療の継続性に支障をきたすことは少なく、安心して日々の臨床に集中できる。

 

 

 

動物病院の収益性の差は、原価率と人件費率と物件比率の差である

筆者は、これまで、2000人以上の院長とお会いしているが、成長性重視の院長が大半で、

収益性を重視している院長は少数派である。今まで述べてきたように、動物病院は30年以上の成長期から少なくても10年以上のマーケット縮小期に入ろうとしている。マーケット縮小期においても、動物病院経営を継続させなければならないのは当然である。そのためのキーポイントは、動物病院の三大コストである、原価と人件費と物件をコントロールすることである。

 

 

売上が3割落ちても、収益性が高ければ、病院の継続は難しくない

表2はA,B、C、Dの動物病院の売上が3割落ちた場合のシミュレーションをしたものである。Aの動物病院のみ収益性が低いので売上が30%落ちた場合に、継続性が危機に直面しているが、B、C、Dの動物病院は売上が30%落ちても経営は安泰である。

 

 

 

 

収益性の高い病院は事業承継に適しており、高く売れる

自分の病院がいくらで売れるかは、院長の関心事だが、実は、病院を事業承継し、その病院を買った場合の返済資金は、基本的には病院の利益すなわち院長報酬である。

収益性が高いということは、病院の存続においても、病院の事業承継においても非常に重要な要素であるので、成長性重視から収益性重視への意識改革をすることが院長にとって必要不可欠である。

2016年10月30日更新