インタビュー

Interview

承継開業インタビュー 病院譲渡インタビュー スペシャルインタビュー

譲渡成功インタビュー

5年間かけて事業承継した院長

匿名
匿名

なぜ先生は開業された病院を譲渡しようと思われたのか。その理由は何だったのでしょうか。また、譲渡までに5年間の月日を掛けられていますが、その理由は何だったのでしょうか。

開業したのは、1984年のことで、15坪から始めました。時は高度経済成長期からバブルに入ろうという頃。犬を飼う人が増えて、開業すればすぐに大きな病院になりました。
私もこの流れの中で移転してもっと病院を大きくしようと考えます。
バブル期ですから、銀行は飛んでやってきて、融資額はこれだけあるからとどんどん借りてくださいと言います。銀行員が言うままに資金を借りて、どんどん病院は大きくなりましたが、その分、借金の額も膨らみました。そのため、実家が抵当に入ることになってしまいました。
好景気が続く時代というのは、今では信じられないような行動を平気でしているものです。
例えば、病院を移転したいという理由ですが、それは人手不足にありました。若い勤務医に来てもらいたいけれども、古い病院だと見向きもされません。勤務医を雇うために病院を新しくする必要があったのです。
今にして思えば、おかしいこと。これが本気でそう考えられたのが、バブルという時代でした。
もう1つの理由は、開業時の病院は町中にあったので、次から次へと来院される患者さんの車で近隣の人たちには迷惑をかけていました。それがある時、トラブルになってしまって、これを契機に移転しようと考えたからです。
さらには、私1人の獣医師では限界を感じていました。毎日仕事漬けで、新たな技術の勉強にも行けない。このままでは自分はこの業界の中で取り残されてしまうのではないか。10年もしたら、この病院は時代遅れのダメな病院になるのではないかという恐怖心があったのも移転の理由の1つです。(中略)
この事業承継の期間が5年間と長かったのは、担保になっていた実家だけは守りたかったからです。バブルの頃からの借金の額が額だったので、この抵当権を外すことを条件にして病院を譲渡しました。この間は、私も、新院長も苦しかったでしょうが、この事業承継のおかげで、病院も潰さずに済み、実家も守ることができました。

 

バブル時の話は他で聞く事もありますが、後になって「とんでもないことをやってしまった」と気付くことが多々ありますと聞きます。先生はこのどん底でどんなことに気付かれたのでしょうか。こうした教訓はみなさんの役に立つと思いますので、ぜひお話ください。

この業界はこれまでに日本経済の高度経済成長とバブル、そしてその後のペットブームと、2つの大波を受けて急成長して来ました。
開業して病院を持てば、この大波が病院を大きくしてくれました。この時にも苦労はありましたが、それは、不況の時とは違います。
それは、みるみる間に借金が増えたりするとか、若者が人手不足で雇えないという苦労です。
銀行がどんどんお金を融資してくれますから、病院を大きくしたり、移転したりするのは簡単です。当時は獣医師1人の病院に限界を感じていたので、一気に拡大路線に走ってしまったのが、そもそもの誤りでした。若者を雇ったことでの意識ギャップに今度は悩むことになってしまいます。
そして病院が大きくなるにつれて、私は獣医師という職業を離れて、この病院がビジネスとして成り立っていけばいいと考えるようになっていきました。つまりは、動物病院としては私の魂の入らない病院になってしまいます。これでは、他者はついてはきませんね。

 

この事業承継で感じられたことをお願いします。

開業した病院を売却して半年経ちますが、次の人にバトンタッチするまでに5年半かかりました。この事業承継で、借金もある程度整理でき、新たに病院も開けたので、日々の暮らしが幸せだと感じられるようになりました。
この動物病院業界はまだまだこのままでもやっていかれると考えている人が多いかもしれません。相変わらず、無理して借金して、新しいテナント、新しい機械、スタッフを入れての新規開業が続いています。特に大都市周辺で増えていますが、こうした地域は調べれば分かりますが、動物病院の数はもう満杯状態です。他業種とも競合しますので、いい場所にテナントが空いていることもありません。
ならば、どうするか。
誰かが大事にしてきた病院をそのまま引き継ぐ方が、新規よりもいい開業スタートになると思います。古いモノをどう活かして行くか、どう次につないでいくかが大事な時代になってきています。借金だらけで、それで高額の請求を飼い主にすることで「あの病院は」と言われるよりも、今ある病院を引き継いで、患者さんや家族の幸せを考えられる獣医師が増えてほしいですね。
お金のために病院をやるのか、ワンちゃん、猫ちゃんの幸せのために病院をやるのか。どちらの獣医師が増えるかで、この業界は今後がらりと変わると思います。 今はその一番大事な選択の時でもありますから、この事業承継で、幸せを考える獣医師が増えることを望みますね。