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第三者事業承継で総合診療から
耳の専門医としてリスタート。

どうぶつ耳科専門クリニック主の枝(兵庫県洲本市)
杉村 肇 院長

耳専門の病院は世界初、日本初でしょうか。なぜ総合診療から耳科専門の病院にしようとしたのか、その動機からお願いします。

まず耳の専門病院が世界初かと言うとわかりません。米国には「耳と皮膚」の専門病院はありますが、日本では私が初めてでしょうね。
この耳診療については、22、23年前からの関心事でした。忙しく総合診療している中で、難しい中耳炎の症例が出てくるようになりました。「どうすればいいのか」と思っていたところ、アメリカの文献で、アメリカではワンちゃんは全身麻酔をして鼓膜を切開して中耳炎などを治療していることを知りました。そして実際にやってみたら、結構、良くなっていく。この時から耳に関心を持ち、ヒトの医科大学における「耳科学」などの学びを通してもっと勉強して専門性を高めたいという気持ちになりました。
耳に関心を持つと今までなんとも思わなかったことに気が付くようになりました。その1つは、「表情」です。動物たちは言葉では気分を表現できませんが、その表情にあらわれます。耳治療をすると、麻酔をかけたにも関わらず、終わった後の方がスッキリとして、表情が明るく元気になります。明らかに術前と術後では違います。こんな様子をみていると、ワンちゃんにとってこれは「タダ事ではなかった」ことに気付かされました。

 

ワンちゃんはそれをどういう形であらわすのでしょうか。

やはり、「耳を気にしている行動をとっている」ことですね。アニメで「後ろ足で耳をかいているワンちゃん」がよく出て来ますが、これは犬としては明らかにおかしな行動で、耳を患っているからなのです。
今日では家族の一員として家の中で飼われているワンちゃんがほとんどです。そのためか、飼い主さんが「なんだかやたらと耳を気にしているので連れてきました」という人が圧倒的に多いですね。
耳は脳につながっていますから、耳の炎症を放っておくと、実は「中枢性前庭疾患」になってしまうことがあります。こうなると、予後が厳しいのです。ワンちゃんが耳を気にしているのは実は大事なシグナルを送っていることなんだと警鐘を鳴らして行くことも私の役目なのかもしれません。

 

承継すると、たいていはリタイアか、セミリタイアしか道がなくなりますが、杉村先生は第3の選択肢、リスタートと捉えてもいいのではないかと思います。これは他の先生方にもこんな方法もあるのかと気付かせるきっかけとなると思いますが、杉村先生はどうお考えですか。

一度だけの人生ですから、総合診療はいつまでも続ける必要はないと考えていました。
総合診療を続けながらでは、関心、興味を持った「耳」については深めたくとも時間的な制約があるので、できる範囲でしかやれませんでした。「耳」については実は学問としては奥深くて、ヒトの「耳科学会」などに出席すると大変勉強になります。
年齢的にはそろそろリタイア後を考える世代なのでしょうが、むしろこれからが本当にやりたかったことができると考えています。いろんな患者さんが来られて難しい症例がありますが、どう対処するかを学ぶことに生き甲斐を感じてやっています。気分も体力も充実しているのは好きなことをしているからでしょうね。自分の得意とすることが社会の中で活かせるのはこの上のない喜びですから。

 

杉村先生はもしこの第三者事業承継を知らなければどうされていたでしょうか。

おそらくは、総合診療をそのまま続けていたでしょうね。飼い主さんをそのまま放ってはおけませんから。しかし、自分が思うような診療ができないと日増しにフラストレーションはたまっていったでしょうね。
流行っている病院の院長先生のなかには、私と同じように感じておられる方も少なくないと思います。1つ1ついい仕事ができているかと言えば、そうではありません。患者さんが多いのは有難いですが、自分が満足のいく仕事にはなっていない。私はこの第三者事業承継で総合病院を譲って、自分のやりたいことを選びました。利益追求も大事ですが、自分の人生がそれだけで終わってしまうのはどうかと考えた時、事業を譲って好きなことに特化する道を選びました。
日本の場合は80%が承継者のいない場合にそのまま廃業してしまうと聞いていますが、これはなんとかしなければならないことですね。承継者は子供だけではなく、第三者から選べばいいし、承継後についてもいろいろと選択肢はあります。なければ、私のように作ればいい。
決断と行動は早ければ早いほどいい。これは経験者としてぜひとも強調しておきたいことです。
この承継によってやっと自分がやりたいことができるようになった。生き甲斐をもってこれからの人生を送れるのも、この承継のおかげです。